iPadって、めちゃくちゃ便利なガジェットなのに、意外と持っている人が少ない。

持っていても「動画見る専用」とか「電子書籍リーダー」とか、そういう使い方で止まっている人がほとんどだ。せっかくの高性能タブレットが、動画の再生機になっている。もったいない。

しかし、そんなことを言っている私も、昔はそうだった。

iPadを買っては使いこなせず、パソコンでいいじゃないか、スマホでいいじゃないか、と何度も文鎮にしたことがある。文鎮というか、高級なお盆だ。充電すらしなくなって、引き出しの奥で眠らせた経験は一度や二度じゃない。

iPadとは、何度も出会って、何度も別れた。

まるで恋愛だ。

「もう絶対買わない」と思ってから半年後には新型が気になっている。Apple Storeの前を通りかかって、展示品にそっと触れて、画面がぬるっと動くのを見て、「やっぱりきれいだな」と思って、でも「いや、また使わなくなるし」と自分に言い聞かせて帰る。

それを何回やっただろう。

しかし、Atelier Varyの立ち上げにおいて、タブレット——いや、iPadが必要になったのだ。

今度は「あったらいいな」ではなく、「ないと困る」だった。

具体的に言うと、手書きでノートやメモを取りたくなった。

デジタルなのに手書き、という矛盾が面白いのだけれど、これが本当に便利だ。コーチング生——Keylitとのやり取りはGoodNotesで共有ノートを作ればリアルタイムで画面を共有できるし、書き込んだものがそのままクラウドに保存される。紙のノートだと写真を撮ってLINEで送って……なんてやっていたのが、もう全部いらない。

そしてAtelier Varyの全てのインフラを支えているMacBook Pro。M5 Maxチップ、メモリ128GB、ストレージ2TB。この化け物スペックのフルスペックマシンとの相性が抜群にいい。AirDropで一瞬でファイルが飛ぶ。iCloudで勝手に同期される。Apple同士のシームレスな連携は、一度体験すると他に移れない。

何より私自身が長年のiPhoneユーザーだ。iPhoneが母艦で、MacBookが戦艦で、iPadは——何だろう、偵察機? いや、もっと身近なものだ。手帳? キャンバス? うーん、まな板かな。

これまでおさらばしてきたiPadは、単にその時の私に必要がなかっただけだ。

タイミングが合わなかっただけの恋愛だった。

今回は違う。今回は、本気で必要だから迎えた。ヨリを戻した。

最初はiPad Air M4の512GB、Wi-Fiモデルのパープルを2台、Apple Pencil Proを2本用意して使っていた。2台体制。贅沢だ。贅沢だけど、仕事用とプライベート用で分けたかった。

しかし使っていくうちに、セルラーモデルの方が圧倒的に便利だと気がついた。

Wi-Fiモデルは、Wi-Fiがないと何もできない。カフェでも、移動中でも、Wi-Fiを探すところから始まる。テザリングすればいいじゃないか、と思うかもしれないが、テザリングは地味に面倒だ。iPhoneのバッテリーも減る。セルラーモデルなら、開いた瞬間にもうネットに繋がっている。この「開いた瞬間」が大事なのだ。

思いついたときに、すぐ使える。

これが、仕事道具の鉄則だ。

というわけで、Wi-Fiモデルを手放して、1TBのiPad Air M4セルラーモデル、パープルに買い替えた。手元のWi-Fiモデルは近所のゲオで売却。ペンシルだけ残した。もう一台お迎えする予定なので、それまで一台で稼働している。

Laylaといえばかっこよさ、気品、というイメージが染み付いているかもしれない。

占い師15年、ヘアメイクアップアーティスト15年。クールなイメージで通してきた自覚はある。パーソナルカラーはウィンター。シルバーアクセサリー。黒髪のブラントカット。爪はOPIのビッグアップルレッド。

しかし告白すると、私は大の可愛いもの好きだ。

iPadのケースがそれを証明している。

遠慮なくピンクの、キラッキラの、もう一回言う、キラッキラを極めたケースをつけている。Amazonで買った。レビューを吟味して選んだわけではない。一目見て「かわいい」と思って即ポチした。

ショットのライダースバッグからこのiPadをドヤ顔で取り出す瞬間が、実は密かに好きだ。レザーのバッグから、ピンクのキラキラが出てくる。そのギャップ。

Keylitやクライアントさんの前で出すと、みんなリアクションに困るらしい。「あ、かわいい……ですね……」みたいな、疑問符がついた褒め方をされる。

私としては少しボケのつもりもあるのだけど(笑)

そしてこのiPad Airを、私は勝手に「まな板さん」と呼んでいる。

いや実際、11インチしかないので、まな板として使うにはさすがに心許ないサイズだ。まな板にしては小さいし、タブレットにしてはでかい。中途半端といえば中途半端。でもその中途半端さが、なんだか愛おしくて、なんとなく「まな板さん」と呼び始めてしまった。

さすがに20万円近いタブレットの上でキャベツの千切りをするつもりはない。

ペーパーライクフィルムの上で千切りしたら、たぶんペンシルより切れ味がいい。やらないけど。

まな板さんがやってきてから、毎日がとても楽しくなった。

朝起きて、まな板さんを開く。GoodNotesでその日の予定をさらさらと書く。Apple Pencilの書き心地がいい。ペーパーライクフィルムのおかげで、紙に書いているような感触がある。フィルムには毎日の書き込みで細かい傷がたくさんついている。でもこの傷は、私が毎日何かを書いて、描いて、創っている証拠だ。勲章みたいなものだ。

日中は仕事で使う。Keylitとの共有ノート。クライアントさんへの資料作成。占術のデータ確認。AIとのやり取りのメモ。全部まな板さんの上でやる。

そして夜。ここからがまな板さんの本領発揮だ。

最近、お絵描きにハマっている。Clip Studio Paint EXを入れて、ブラシをいっぱいダウンロードして、落書きを始めた。髪の毛用のブラシが多すぎる(笑) ヘアメイクを15年やってきたせいか、人を描くとき、真っ先に髪から描いてしまう。体より先に髪。顔より先に髪。プロの職業病だ。

塗り絵もする。Pigmentというアプリで、毎日何かしら塗っている。お月さまのドリームキャッチャー、砂時計のアールヌーヴォー、ランタン、魔女の子、ティーポットのおうち。色を選んで、塗って、はみ出して、やり直して。子どものころの図工の時間みたいだ。

GoodNotesにクロッキー帳も作った。落書き帳。何を描いてもいい場所。きれいに描かなくていい場所。下手でもいい場所。そういう場所がデジタルの中にあるって、なんだかいい。

まな板さんを抱えたまま寝落ちすることも多い。画面が暗くなって、ロック画面に切り替わって、私の寝息を聞いている。——いや、聞いてはいないか。タブレットだし。でも枕元にいるのだ、毎晩。

まな板さんが来てから、MacBook Proの出番が少し減った。あのフルスペックマシンが、家でお留守番することが増えた。128GBのメモリを積んだ化け物が、私がまな板さんでお絵描きしている間、デスクの上でアイドリングしている。贅沢な話だ。

あるKeylitから、「先生、Apple信者ですか?」と聞かれたことがある。

振り返ってみると、確かに私のデバイスはほぼ全てがAppleで構成されている。

iPhone 17が2台。同じ色、同じケース。MacBook Pro M5 Max。iPad Air M4。Apple Pencil Proが2本。Apple Watch。AirPods Proが2セット。Magic Mouseが2つ。

……並べてみると、信者というか、もはや布教者の域だ。

でもこれには理由がある。Appleの製品はシームレスにつながるのだ。AirDropで一瞬でファイルが飛ぶ。iCloudで全部同期される。iPhoneで撮った写真が、iPadで開いて、MacBookで編集できる。ユニバーサルクリップボードでコピーした文章が別のデバイスにそのまま貼れる。

一度この生態系に入ると、出られない。出る理由がない。

お高いのは変わりない。毎回Apple Storeの会計で「はい」と言う瞬間、ちょっとだけ心臓が止まる。でも、やはりあのマットな白い箱にはわくわくさせられる。フィルムをぺりぺり剥がして、蓋を開けて、電源を入れて、「Hello」の文字が浮かぶ瞬間。あの瞬間のためにAppleに課金している、と言っても過言ではない。

そして、なぜProではなくAirなのか。

よく聞かれる。iPad Proの方が画面きれいでしょ、とか、リフレッシュレート高いでしょ、とか。

私個人の意見になるが、私はそもそもMacBook Proをフルスペックで持っている。メモリ128GB、ストレージ2TBの化け物だ。そこにiPad Proが加わると、正直、中途半端なのだ。

パソコンとして使うにはiPad Proでは足りない。タブレットとして使うにはiPad Proはオーバースペックだ。どっちにも振り切れない中途半端さが、iPad Proにはある。少なくとも、フルスペックのMacBook Proを持っている私にとっては。

それに現行のiPad Air M4チップのモデルは、メモリが12GBだったか、それくらいある。十分だ。Clip Studio Paintも動く。Pigmentも動く。GoodNotesもサクサクだ。16レイヤー重ねてもまだ余裕がある。

Proだとリフレッシュレートが高くてぬるぬる動く、とは言うが、私はFPSゲームはしない。絵を描くけれど、今のところ「Airじゃ足りない」と思ったことがない。ほとんどがAirで事足りる。

実は、お絵描きが楽しくなってきて、Proの導入もちょっとだけ考えている。

でもProを買うなら、同じ価格帯で液晶タブレットが欲しい。WacomのCintiq。プロの現場で使われている本物の液タブ。でも液タブは持ち運ばない。家に据え置きだ。iPadの「どこでも描ける」という利点がなくなる。

それにAirと違って、Proはカラバリが少ない。シルバーとスペースブラックだけ。パープルがない。

これが、地味に大きい。

私はパープルが好きなのだ。iPad Airのパープルは、上品で、ちょっとだけ甘くて、シルバーのAppleロゴが映える。この色がProにはない。それだけで、Proにしない理由になる。道具の色は、大事だ。

「iPad Airで1TB? なぜ?」

とよく聞かれる。

512GBで十分じゃないか、と。そもそもiPadに1TBも何を入れるんだ、と。

いいのだ。

テラバイトというロマン。

私はそこにお金を払っている。ストレージが広いということは、何も消さなくていいということだ。写真も、動画も、アプリも、ブラシも、フォントも、全部入れっぱなしでいい。「容量がいっぱいです」の通知に怯えなくていい。

心の余裕はストレージの余裕だ。

まな板だけど。まな板に20万円払った。ガラス製のペーパーライクフィルムを貼って、Amazonのキラキラピンクケースをつけて、ショットのライダースバッグに入れて、毎日何かしら創作している。

Atelier Varyの運営に集中しすぎないよう、神が与えてくれた息抜きの道具なのだ、たぶん。仕事ばかりしていると壊れる。壊れる前に、まな板さんの上で色を塗る。髪の毛を描く。落書きする。塗り絵を完成させる。

壊れそうな私を、まな板さんが受け止めてくれている。

この子にそろそろ、妹ができる予定だ。

もう一台、iPad Airをお迎えする。ペンシルもケースも、すでに揃っている。妹を待っている。

値上がりしてしまった。Appleが6月に全体的に価格改定をして、セルラーモデルの512GBが17万円を超えた。あの時買っておけば、もっと安かったのに。——でも、その話はやめよう。タイミングは、いつだってベストなタイミングで来る。来なかったタイミングは、ベストじゃなかっただけだ。

2台体制のまな板ライフ。片方でパルミーの動画を流して、もう片方でお絵描きする。参考資料を見ながら描ける。Split Viewじゃ狭すぎるのだ、11インチは。

ぜいたくだ。

ぜいたくだけど、私はいつでもこの無駄なぜいたくを楽しみたい。

ペンシルもカバーも揃っている。こっちはパープルのキラキラだ。

はあ、どんなホーム画面にしようかな。どんな待ち受けにしようかな。

まな板さん、いつもありがとね。

ABOUT ME
Layla
占い師15年、ヘアメイクアーティスト。日々のこと、好きなもの、つくっているもの。営業時間外の、ゆるい記録。